ブルグミュラー25の練習曲op100-3
La pastrale 楽曲理解のために

お正月明けて、生徒がこの曲を持ってきました。
お休み中も一日も欠かさず練習できててえらい。
そして元気よく弾いてくれました。
だからこそ、このまままるにして終わりにするのはもったいない、ということで、もう少し深く掘り下げてみることに。

”牧歌”が遠い子どもたちのために

私は田舎の盆地育ち。
だから、山の上のなだらかな丘で寝転んで草をはむ牛や羊の番をしている牧童、というのにとっても憧れました。
住んでる地域は違っていても、盆地の我が街にも草むらはあり、風は吹き、牛舎で牛も間ののびた声でないていました。
だから、その心地よさがなんとなくわかるし、でも、ここにはないものとして、憧れることができた。

けれども、今、私の教えている子達にとって、この曲の背景に見える世界の共有ってどんな感じなんだろう?とかんがえました。

観光地に行けば、放牧されている牛や羊にも出会えるかもしれません。
これは、牛。これは羊。草を食べていて、実際草をやってみたりして。
家族で旅行の楽しさ。


でもそこで日がな一日、牛や羊たちとつかず離れず過ごす時間って、もうひとつ感覚的に掘り下げ、というか、飛躍が必要なのかも。

さて、ときをさかのぼって、場所も西洋の話。
田園風景、農夫の暮らし、というのに、実は西洋貴族たちはどこか憧れを持っていて、これは西洋文化の中で繰り返し出てくる原風景のようなものでもあります。
それを思えば、街の暮らしの中で、牧歌に思いをはせる、というのはありで、どっぷり田舎暮らし(牛の糞の匂いなんかもがっつりしてくる。)である必要はないのかも、などと、思ったり。

風と草に焦点を当ててみる

そうこう話しながら考えていて、そうかそうか、私がこの曲にすぐにイメージした「風」を伝えて見るのは良いかも、と思いつきました。

右手は、草原に響く、牧童がならす笛の音。とくに、最初の伴奏のない2小節はその広がる風景に一筋流れてくる、ささやかな音楽が見えてくるようで、イメージをかきたてます。

そして、このレッスンで生徒と二人でよくよく感じてみることにしたのが左手。

ブルグミュラー 牧歌3小節目から

主和音というのは、その存在が大きく出るときと、安心した背景になるときとがあると思うのですが、これは後者。
草が爽やかな風に吹かれてさざめく、みたいな。
牧草ですね。お花じゃなくて。
細長い葉っぱが一斉に揺れる。
それが一小節内のひとかたまりになっている、4つの和音からイメージ喚起されます。最後の付点音符の長さの心地よさ。

ここは、左の3つの8分音符を弾いた後に、右手の3つの8分音符を弾くので、多くの初心者さんたちの場合、続けて8分音符を6っこ弾く、一本線になってしまいがち。

この生徒さんも、utena drawingで描いてもらうとそれは一目瞭然で、左の4っつめの付点は全然その存在を意識してもらってないのがわかりました。
でも、そこを感じられたらもっと気持ちいいよ。
ということで、何度かいろいろ対話しながら形を変えていきました。

ブルグミュラー 牧歌・左手のドローイング

最初の私の誘導線から、自分の感じるもの、音楽が持っているものを模索して、一つのループする動きが生まれてきました。演奏でもちゃんと統一された一つの流れができました。

*utena drawingとその方法を実際やってみる講座については下にリンクを貼っています。

後半もオスティナートリズムは続く

ちょっとアナリーゼ的なことをいうと、11小節目からの左は一見別のリズムのようですが、3小節目からのトトトトーンの流れを引き継いでいます。

ブルグミュラー 牧歌11小節目の左手
ここも、草むらの風は続く。

メロディの役割、伴奏の役割、そして、その一つの流れ

一度左手、右手、と分けて練習したのですが
さあ、いざ、風景を作っていくというとき(まるで絵筆を持って描いてるみたいです)右手が主体、左手はいわば背景。背景といっても、止まっているのではなくて、もちろんそこに風が吹いてるわけで。
左の流れがあることによって、右の伸ばす音、経過していく音も勢いやのりがついてくるわけで、その全体に渡る流れの感じをも感じてみました。

刻むのではない揺らすテクニック

そして、右手のメロディとして、響のある音にする方法。これはアタックがきちんと鍵盤の底に到達しながら、流れを作っていくことでつたわるものになる。
左の草を表すとしたら、手首のしなやかな動きが必要になってくる(utena music field)ドローイングしたことを演奏におきかえていく、という方法。
そういったことをピアノの前で実際に演奏しながらいろいろやってみました。

きちんと楽譜を読み、弾けるようによく練習してきてくれたいたからこそできた、この日のレッスン。楽しかったねー。

ブルグミュラー牧歌 演奏谷中美香

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ということで、
「譜読み」の次段階はこんな楽しいことが待ってるんだよ、と伝えられたかな。

草むらに風が吹くとき、
なにか心に動くものも感じられるようになっていくかな。
大事なんは、ピアノが弾けるようになることかな、
風をうんとリアルにイメージできることかな。
きっとその両方はつながっていて、
ついでに、自分の体のなかを風が流れていくとき、
きっと、その人は豊かだろうな、なんておもったりします。

ブルグミュラーさん、ほんとありがとう!


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