この曲は、たゆたうような左のアルペッジオが全体の空気感を支えています。
このアルペッジオの難しさは幅の広さがあると思います。
この「たゆたう」ということと「幅の広さ」は別物ではありません。
でも、練習していると「たゆたう」は表現、 「幅の広さ」はテクニックというふうにとらえて、とにかくミスタッチのないように指を届かせる幅の広さだけの練習になってしまいがち。 中学生の生徒もそうでした。
ここにもう一つの要素「微細にかわるハーモニー」も一緒にとらえることで、ミスタッチ=「幅の広さ」という囚われから離れ、もっと全体を捉えていくこと、立体的にきくことに変わっていくことができないか、と考えました。結局そのほうが、近道だからです。
赤で描いている線は最初、ゆっくりとしたテンポを捉えるのに、大きな波を描こうとしたもの。でも、この赤の線の大きさでは、テンポだけしか捉えられないことに気付きました。この生徒はどちらかと言うとテンポを自分の理解より速く捉えてしまいがちだから、むしろ、ちいさく描くこと極端にゆっくり描くというストレスを与えることによって、集中を増し、音と音の幅を動きながら意識的に捉えられるよう 工夫しました。これはオスティナートスケッチに分類できます。
これはとても効果的でした。
この練習と合わせて、楽譜の右・左の両方を縦に眺めていき、ハーモニーを抽出した練習をしていきました。
「ミスタッチに気をつけなさい」なんていうのは 野暮、と私は思うのです。
注意深く聴くことができ、自分が理解できる速度や、楽曲ならではの速度を獲得することによって、ミスタッチは別の気付きをもたらせてくれます。
utena.m.fの音楽プロセス体験
音楽を育むための大前提は、個人の感覚を大切にすること。
感じることと音楽を結ぶためになにをすればよいか、utena music field はそれを模索し続けています。音楽プロセス体験に基づいて、生まれてきた講座や勉強会をご紹介します。





