闇の中の対話/ダイヤログ・イン・ザ・ダーク

闇の中の対話/ダイヤログ・イン・ザ・ダーク

Dialog in the dark ..闇の中の対話。

文字通り、闇の中の対話に 行ってきた。

このイベントについて知ったのは随分前に読んだ新聞の記事だった。それは ドイツの夜の暗い森の中を目の見えない人に手を引いてもらって散歩するのだと。なんてファンタジー!!と思ったのだ。私にとっては、ジョージ・マクドナルドの「リリス」やアルジャナン・ブラックウッドの「ジンボー」の世界観。(借りてきた写真は薄暗がりですが、本当は本当に真っ暗闇です!)

それが、東京のど真ん中の ビルの中にもある、と知ったのは一つは知人に借りた・・・というか、勝手に手渡されたの中にあったのと、知り合ったばかりの方にそこにいった話を伺い、何故かパンフレットが車の中に・・・といって車から取り出してきて手渡されたのと。ほら、まるで、もうファンタジーの入り口じゃないか。行かない手はない。

90分間、そこで知り合ったばかりの人達8人と 純度100%の暗闇の中を歩く。一人はアテンダーとよばれている視覚障害の人。彼女がいなければとても前へは進めない。カーテンの向こうは文字通り、墨を流したような黒。本当に何も見えません。最初は反響のない暗闇で、暗いトンネルの中に居るようで実を縮めていたのだが、多分実際はもっと広い部屋の中。アテンダーの指示をききながらあるき、ころがってくるボールを受け止めたり、他の人との距離感をたしかめたりし、そして歩を進め広い場所にいる空気感が感じられると、結構大胆に動くこともできるようになってきた。

視覚を奪われると、聴覚が一番にものをいうのだとおもっていたけれど、実際には触覚のちからのほうが先に動いた。触覚で感じる世界、というのは、そこいらじゅうが すべて地続きな感じだ。やがて動き出した聴覚にしても、全てが繋がりの世界の中だった。

あとから思ったのだが、視覚、というのは境界を作る。エッジのはっきりした世界で、全ては区切られている。そんなことを感じたのは初めての事だった。触覚の世界はつながっている。触れて感じる世界なのだから当たり前だが、エッジのないゆるい世界の魅力を感じ、ちょっと忘れられない体験になった。

そして、聴覚それも、原始的な、というか、生命に直接関わるような、というか、そういう深部の聴覚、の存在。それに対し、音楽、というのは聴覚世界において、いかに不思議な輝きを放ち、形をなしているか。音楽と言うのはあの世界で特殊な形を持っている。そんなこともあとから思い浮かんだ。

さて「 暗闇の対話」の一行はカフェにたどり着き、先頭に立っていた私がそのドアを開けると、カフェの店員さんがそっと手の握り、「ようこそ」と話しかけてきた。

これもまた不思議な体験だった。一緒に明るい場所からここへ来た面々はほんのちょっとでもその姿を見ているから、闇の中でもそのイメージは残っていて、何がしかの形を自分の中に思い起こしながら話すのだが、それは全く無意識のうちにそうしているのだが、その彼にはどんなイメージも湧いてこない。声と手だけ。透明人間と話しているみたいだった。そして、結局私は彼とはこの暗闇で別れ、この不思議な感覚はそのまま残ってしまっている。カフェでは店員の食器を洗う音がする。それで誰かそこにいることをしる。

誰かが「落としたりしないんですか?」と尋ねると

「見える人だって落とすでしょう?」という返事。そりゃそうだ。

質問をした人も何も見えていない。見えていないから素朴に尋ねられたんだと思う。なんだか不思議な対話だ。ふしぎになにか逆転してる。

私はこのカフェでの出来事が、本当にまるでファンタジーの世界に迷い込んだような感じで素敵だった。

暗闇を出て、薄暗がりで目をならしている間に、アテンダーの彼女にいろいろ質問が出た。日常はどんな暮らしをしているの?買い物は?一人で知らないところに行くときは?道の盲人用の案内のプレートがもし自転車でふさがっていたら?その一つ一つの答えに ほー、と感心する。闇の先輩だ。

それから明るいところへ出て、私たちは出会った人たちとたわいない話をいつまでもしていた。あの、地続きの世界で出会った人たち。

帰り道、駅まで同行した方が 目がとても楽になった、とおっしゃって、あ、ホント。何か顔がゆるんでいるのを感じた。

次の日、満員ラッシュの駅の構内で、白い杖を持って歩いている人を見かけた。自然、その杖の先に空間ができるように斜め後ろに私はしばらくついて歩いた。その彼は今もあの闇の世界で生きている。すごいことだ。

あれから数日たった今も、あの地続きの世界と、握り合って存在を確かめ合った手の暖かさが無意識にしっかりと刻まれて、知らない世界がかつてであった世界となっていた。

視覚によって隔たれている世界は実は一つなのだ。

それがわかった。


もう一度行ってみなければ、と思っているDialog in the darkですが、東京はあと百日足らずでなくなるかもしれない・・という情報がありました。本当に貴重な場所です。続けられるようになることを心からお祈りしています。

外苑前駅から8分だそうです。チケットはHPで空きをみて予約します。

また、大阪にもあるようです。

皆さんも是非、行ってみてください!楽しいこと請け合い。

ダイヤログ・イン・ザ・ダーク

 

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