ショパン・エチュード作品10−6その後

この曲のメロディは ピアノの音が、内声の波のなか、細く消えていきそうになりながら、次へ次へと紡ぎ出されていきます。ピアノは音が減衰する、という特性を持っていて、それを見事に生かした曲ではないかと思うのです。

前に chopinの練習曲 作品10−6の内声をスケッチした彼でしたが、スケッチを通して伝わったものは もうしっかり流れの中に溶け込んで、その上に自然な抑揚もつき、先週には全体を通しての大きな流れを掴み、そして今週。

先々週についての詳しくはこちら
ショパンのエチュード作品10−6内声のゆらぎ

演奏は随分とこなれてきていて、内声の滑らかさもまあまあついてきました。

取りあえず楽譜をば。

chopin10-6

今回はさらに、メロディライン。
アウフタクトのあと、拍の頭に伸びる音がくるのが特徴的な曲なのですが、その伸びる音が 次のアウフタクトまで持たなくて、メロディがぶつぶつと切れがち。今のところ、メロディで全体性を感じているのではなくて、生来的に持っているハーモニーの感覚と、2週間前に身に着けた内声のオスティナート・・・ようするに、全体の流れがついているのは伴奏のほうで主役がまだ登場していない感じだな。

前回、前々回から今回にかけてクリアできたこと、本人も感じているそれを、十分に認め、すばらしいね、といったあとで、

この先をやってみる気はあるだろうか?と尋ねると、

あります。という熱い返事が返ってきました。

という前置きがあって、一番上の写真のワーク。

細い線が、最初感じていたメロディラインで、濃いほうは、私のメロディに対する感じ方を伝えるために描いた線。メロディの上がり下がりに応じて身体的にダウンしていたところを意識的によく聞くことで、流れがつかめてきたようです。こういう身体的な見立ては、アレキサンダーテクニークから学んだところも大きい。

描いている時間なんて、ほんのちょっとです。ものの5分とか、そのくらいで、すぐにピアノに戻って、演奏をはじめました。描いたことと、メロディの構成、流れを関連付けられるような話を少しして、長い音符の尻尾を小節最後の音につなげるように聞いてみる、ということを指示しました。

演奏は大きく変わってきていました。ピアノの減衰する音に心を寄せていく彼の仕草も変わってきていました。

ショパンのエチュードの本を渡す時、正直少し心配でした。彼にとって、楽譜代は馬鹿にならない出費です。そして彼はショパンのようなファジーな感覚というのが長いこと苦手でした。3曲やってみて、うんと柔軟性がついてきているのを感じ、これでよかったんやねと思いました。高機能自閉という特性を持っている彼はきた時、怒鳴れば楽しいと思っている(というか、そのようにおそらく学んできていた)感じでしたが、今は耳を傾ける楽しさや、連弾で相手の呼吸に合わせていくことを心から楽しんでいるようです。

ことばで伝えようとすると、不安やストレスでカチコチになる彼ですが、音楽のプロセスを描いて伝えることによって、随分とストレスを回避できるようになりました。このレッスンからさらに2週間がたち、昨日のレッスンでは、メロディラインがちゃんと主役に収まり、たゆたうような内声の波間に浮かぶ船のようでした。

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