音に触れる

”耳を使っておとをきく”

ということの中に、まじりこむ何%かの他の感覚。

どのくらい、人はそれを感じているものなのだろうか。

おとをききながら、 同時に音を見てもいるし、音に触れてもいる。

聴覚、という一つの感覚器官を通してきく音は、大脳皮質で理解するものと、もっと奥の本能的な部分で聴く音とがあって、それらを総括して、音を解釈する。味わう。

そして、おそらくはその脳のさらに奥の方で、感覚はもっと鈍く、虚ろで、それだけに身体に近く、それは他の感覚と未分化でつながっていて、私たちは、音楽を聴きながらも何かを見て、なにかに触れているのではないだろうか。

例えば、音楽理論の中のいくつかの要素を人に伝える時、「見る」という感覚を取り入れたほうが理解が早い、ということがある。上に、とか下にとか、いう言葉での表現や、ゼスチャーなどで、指し示すことは普段からよくあることで、その伝わりやすさを感じている人はきっとたくさんいるのではないかしらと思う。ゼスチャーが入るということはそこに、視覚とともに、運動する感覚も紛れ込んでいる。

きくのは一般的には聴覚だけれども、もっと体験に近いところで音楽を・・となると、視覚や運動感覚それに、もしかしたらもっといろんな感覚が支えているのではないか。

生物学として人の感覚を分類してあるものをみると、下の12のものがあるらしい。

視覚・聴覚・味覚・嗅覚・平衡感覚

触覚・圧覚・温覚・冷覚・運動感覚

臓器感覚・内臓痛覚

その中でも私にとって、音楽のプロセスを実感するということにとって、触れる、ということを取り入れていくとが大事かも。

触れる、という感覚・・つまり触覚は、聴覚や視覚とは別の感覚として分類されて、体性感覚、という分類になる。 聴覚や視覚が皮膚のような外界との接触面がないのに対して、触覚は、じかに身体に関わる。なにかそこに、決定的な違いがある。

触れる、といえば、楽器に触れることと演奏することは切っても切り離せない。ピアノでもどんなタッチで、ということは、響きにもリズム感にも影響を及ぼすので、それは、感覚受容、ということではなくてアウトプットでもある。聞くと同時にその双方向性は生まれていて、だから人の演奏を受容的に聞くときにも、その触覚はうずくように共同する。共感ってそんなものも含まれていると思う。

音楽を感じながら動線を描く、というワークをする中で、綺麗に描けるけれども、体感が伴わないから実感につながらないという場合や、逆に、何か引っかかってうまく描けないジレンマの前に立ち止まる、ということがしばしばおこる。どうも絵描く側にも、観察する側にもそういう時はなにか取り落としているものがあるような気がしていて、いつもそこに壁を感じていた。その理解を隔てている何か、というのは、単に聴覚だけを追いかけていても見つからないかもしれない・・・私自身がその壁を超えられない理由が、暗闇を体験することでみえてくるのではないだろうか、という思いもあり、いつくかの偶然もあり、ダイヤログ イン ザ ダークという暗闇体験に行ってみた。 その時の 聴覚より先に動いた触覚の感じや、見えないけれども景色を理解するために聞こえたものや触れたものから形を創りだしてみようとしていた脳の感じは忘れられない体験になった。この感じ。

聴覚と身体はどこか抽象的につながっていて、直接的でない、と感じる時がある。身体としっかりと結びつきを持っているのは、触覚だ。

おもえば、手触りのない音楽、というのはきっと身近には感じられないと思うのだ。

自分の演奏がなによりまず、自分を満たす演奏となること。そのために必要なこと。そして、音楽の様々な要素、拍子とか音高とか、そういったものを抽象的にだけではなく、身体感覚として、自分に取り入れるために必要なこと。

聴覚視覚のもたらす理性的な面と、もっと深い場所にある感覚器官の動きによって、(触覚だけでなく、冷覚、痛覚、温覚、内臓感覚など、生きものの原初的体験に近い働きによって)人の奏でる音楽は深まりや味わいをまし、他者のやはり深い部分の感覚器官が揺り動かされることでなにかがつかわっていくのではないだろうか。その感覚はきっと、生活のあらゆる面で、自分を知る手がかりとなり、自分の立ち位置を修正してくれるに違いない。

ワークで突き当たった壁は、私が接触感覚を見落としていたことだった。うん。確信になってきた。多くの場合、きくときには連動している 触れる感触が自分が演奏する場合には、うまく取り込めない。それは、もしかしたら、そういう練習というのがこれまでなかったから、という単純な理由によって。

工夫のしようが見つかった気がする。

関連記事

耳の仕組み

子どもはことばをからだで覚える

動きや形が人を癒やす

音楽ワークショップ 「音楽を描く]については こちら↓

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です